大都会の真ん中で詩集を売る人

あれは今から20年以上前のことだろうか。

職場が新宿だった頃、西口に立っている女性を見かけた。

年齢はいくつくらいだろうか?

わからない。

 

最初は気にも留めなかったが、真夏も真冬もいつも同じ場所に立っているのである。

記憶に残っている理由はそれだけではなかった。

その女性が何年も(少なくとも3〜4年)立っていたからだ。

 

「私の志集300円」と首からぶらさげていたボードに書かれていた。

 

企画という職業柄ネタになると思ったからか、

持ち前の好奇心の強さに勝てなかったからなのか、

俺は女性に声をかけた。

 

たわいのない話をしたのを覚えている。

ご病気の旦那様との合作の詩集を売っているとのことだった。

 

この大都会の真ん中で何年、いや何十年も詩集を手売りしていることに驚いた。

 

そして詩集を買ってみたことをしろん(id:sironeko)さんの詩を読んでいて

フッと思い出した。

気になって調べてみたら、新宿の都市伝説になっているほど有名な女性だった。

あの人はSNS全盛の今でも詩集を手売りしていた。

 

今度お見かけしたらまた詩集を買ってみようと思った。